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風に揺れて(北岳賛歌)

登山に夢中になっていた頃、『山と渓谷』という雑誌を愛読していました。
その中に「読者のページ」というコーナーがあり、ある時読者からの投稿で、北岳への想いを綴った詩が載っていました。
そして「どなたかこの詩に曲をつけてくれるとうれしいです」というような事が書かれていました。
とても創作意欲の湧く詩でしたので早速曲をつけて編集部に送ったのですが、掲載される事はなくそのままお蔵入りしてしまったという曲があります。
今回はその曲を紹介してみたいと思います。

北岳は南アルプス最高峰で、日本で2番目に高い山です。そしてボクの最も好きな山のひとつです。
同じアルプスでも、登山者の間では北アルプスの方が圧倒的に人気があるのですが、ボクは好んで南アルプスを歩いていました。景色は地味ですが、うっそうと茂る原生林、深い谷、そしてロープウェイのようなものもなく、人間にまだ汚されていない大自然が豊富に残っていました。
当時のボクは、より人の手の入っていない山、より豊かな深い自然が残っている山を求めて出かけていました。
山に行き大自然に抱かれると心地よさと喜びを感じましたが、あからさまな自然破壊を目のあたりにして心を痛めることもしばしばありました。
「人間と自然がうまく共存することはできないものだろうか」。その頃からそんな事を考えるようになりました。

ある登山ガイドをしている方がこんな事を言っていました。
「自分はこれまでずっと登山をしてきて、山からたくさんの事を学び、たくさんの力と勇気を与えてもらった。今度はそんな山に恩返しをしたいと思った。そして開発により壊されていく山を守りこの山を未来に美しいままで残したいと思った。自分にできる事は何だろう。それは多くの人に自然のすばらしさや大切さを伝えていくことだろうと思った。そしてそれをするために山岳ガイドになった」
ボクはこの話が大好きで「自分も登山者の立場で何かできないだろうか」と考えていましたが、結局大したことは何もできませんでした。

時は流れ、今自分は有機農業をしています。
そして今考えている事、それは「この美しい里山をこれ以上汚さずに未来に残していくためにはどうすればよいか。自然の豊かさや大切さを有機農家としてどのように人々に伝えていくか」という事です。
職業も住む場所も暮らし方も以前とは大きく変りましたが、考えている事はあの頃と同じなんだな、ということに気付きました。
そして自分の有機農業の原点は「山」であり、自分の中では山と有機農業は太い一本の線でしっかりとつながっているんだな。
ふと、そんなことを思いました。

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風に揺れて(北岳賛歌)

作詞 白石恵子  作曲 武藤俊郎

雪がとけたら 夏を告げる
キタダケソウの 花に酔う
そっとこの手で ふれてみたら
白く染まって 風に吹かれ
揺れて揺れて ひとりたたずむ
肩の小屋よ 北岳恋し

空みあげれば 満天の星
きらめき輝く 別世界
明日は草すべり 頂めざそう
同じ夢を 友と誓う
風よ想いよ 伝えておくれ
御池の小屋よ 北岳恋し

朝の光 目ざめる瞬間(とき)
穏やかな顔で 微笑みくれた
今サヨナラの 鐘が鳴る
またいつか これたらいいね
揺れて揺れて 思い出は風に
稜線の小屋よ 北岳恋し




by muto-farm | 2017-12-05 22:54