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しらびそ小屋の君へ

しらびそ小屋も八ヶ岳北部にある山小屋です。前回ご紹介した高見石小屋よりも東側に少し下がったところにあります。ここも私の大好きな山小屋のひとつ。
冬山を始めたばかりの頃、仲間と年末年始にこの山小屋に4連泊したことがありました。ここをベースに硫黄岳や天狗岳に登りに行きました。1日だけ吹雪がひどい日があり、停滞することに。山小屋で終日のんびりと過ごしました。午後から他のグループのメンバーを交え宴会となったのですが、その中にギターのやたらうまいお兄さんがいて(当時の八ヶ岳の山小屋にはギターが置いてあることが多く、お客さんが自由に弾けました。今もあるかな?)、それがカッコイイのなんの。あんな風に弾けたらいいなあ。山小屋の薪ストーブの前でギターを奏でたら女の子がいっぱい集まって来るかも?? これがボクがギターを始めたきっかけとなったのであります(笑)。
さて、このしらびそ小屋、本当にいい山小屋です。原生林の中にひっそりとたたずみ、とても心が安らぎます。まぶしく輝く雪の森、遠くにそびえる天狗岳、窓のすぐ外にあるエサ台にはリスや小鳥たちが集まります。小屋の主人が入れてくれたコーヒをカリントウをつまみながら飲み、薪ストーブにあたってボーっとしていると、ずっとここにいたいような気持になります。
そんなしらびそ小屋をイメージして作ってみた曲です。

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しらびそ小屋の君へ

作詞 武藤俊郎  作曲 武藤俊郎

薪ストーブの懐かしいぬくもりに
包まれて心やすらぐひとときよ
窓の外には天狗岳 東壁が輝いているよ
そして台所では忙しそうに 洗い物をする君がいる
もう少しここにいたいけど もうそろそろ帰らなくっちゃ
せめて君の元気な笑顔を 忘れずに山をおりよう

静けさの中ひっそりたたずむ山小屋よ
時おり風が木々を揺らし森がざわめく
窓の外ではリスたちが ヒマワリの種をついばんでる
そして氷の張ったみどり池で 子犬とたわむれる君がいる
もう少しここにいたいけど もうそろそろ帰らなくっちゃ
せめて君の明るい笑顔を 忘れずに山をおりよう

今度またいつの日か この小屋を訪れる時も
笑顔で迎えてくれる君の姿と 出会う事はできるだろうか
もう少しここにいたいけど もうそろそろ帰らなくっちゃ
せめて君のやさしい笑顔を 忘れずに山をおりよう




# by muto-farm | 2018-11-12 22:14

高見石恋物語

八ヶ岳の北部に高見石小屋という山小屋があります。標高2300メートルの森の中にひっそりと立つこの小屋は、星空とランプの小屋として知られており、とても人気のある山小屋です。12月には毎年クリスマスパーティーが開かれ、冬山シーズンへの足慣らしを兼ねてよく行ったものでした。
今から20年近く前、この山小屋にH君という若き小屋番さんがいました。とても19歳とは思えないほどしっかりとした青年で、誠実でよく働きまさにナイスガイでした。
そんな彼には山小屋で知り合ったKさんという恋人がいました。Kさんは普段は茨城で生活をしていましたが、時々彼に会いに小屋に登って来ていました。会えない日が長く続くとH君は「Kちゃん来ないかなあ、来ないかなあ」とつぶやきながら山小屋の仕事をしていたそうです。
そんな二人を冷やかす歌を作ってクリスマスパーティーの時に歌っちゃおうかな、とたくらみ作ったのがこの曲です。結局その年は仕事の関係でクリスマスパーティーに参加することが出来ず、幻の曲となってしまいましたが……。
やがてH君はKさんと結婚し、山をおり、パティシエを目指し修業を始めました。時は流れ、今彼は軽井沢に本部があるホテルで働いています。実はここのホテルの料理長さんがベジタリアンで、野菜にこだわった料理を得意としています。ある日料理長さんは「これから野菜農家を訪ねる旅に出るから」と出かけることになりました。その時H君が「栃木に武藤農園という無農薬で野菜を作っている農家がいるので行ってみてくれませんか」と言ってくれたそうで、ありがたいことにそれが縁でうちの野菜を使っていただくこととなりました。山で昔知り合った人と今度は農業でつながる事になるなんて、ちょっと不思議な感じがしています。やはり人の縁は大切にしなくちゃな、と改めて感じたものでした。

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高見石恋物語

作詞 武藤俊郎  作曲 武藤俊郎

流れ星 流れ星 早くしないと消えてしまう
あわてて手を合わせ 星に祈るふたり
夜の高見石小屋のテラスに
星はきらめき ふたりを包む
高見石 高見石 素敵な恋が生まれるところ
高見石 高見石 幸せが住んでるところ

少し風が冷たくなってきたね
寄り添うふたりを 月が照らす
さっき何を星に祈ってたの? そっと君に聞いてみる
それはきっとあなたと同じ事よ 無邪気に笑う君

夜が明ければまた君は
茨城へ帰ってしまうから
今夜はせめてこのままずっと 君を抱きしめていたいのさ
また今度会う時も ここで星を見れたらいいね

高見石 高見石 素敵な恋が生まれるところ
高見石 高見石 幸せが住んでるところ




# by muto-farm | 2018-03-22 11:06

オレたちゃ百姓

以前、茨城修業時代の仲間のYさんに誘われて、つくばで「さくら朝市」という小さな朝市をしていたことがありました。原発事故を受け「これ以上大地を汚すことなく、大地の恵みに感謝して収穫の喜びをみんなで分かち合う場を作ろう」、そんな思いを込めて立ち上げた朝市でした。つくばの中心部からはだいぶ離れたカリントウ屋さんの庭先でひっそりとやっていた朝市ではありましたが、毎回様々なワークショップを企画したり、福島から避難している人達と交流したり、小さいながらも内容の濃い楽しい朝市だったと思います。そして毎年秋には「収穫祭」ということで、少し規模を大きくしてイベント盛りだくさんの内容にしていました。その時は実行委員メンバーで「百姓ズ」というバンドを結成し、歌を演奏したものでした。そしてある時この朝市のテーマソングを作ろうと思い立ったのですが、ボクは詩を書くのが苦手。そこでこの朝市の実行委員長的存在だったYさんに書いてもらう事にしました。
この朝市は僕らの思いがたっぷりと詰まった朝市です。そのテーマソングなのだから、感動的な熱血バラード調に仕上げようと思っていました。きっとでき上がる詩も「伝えたい、伝えたい、この大地、命、愛、いつまでも…」というような雰囲気のものになるんだろうなと想像していました。
ところが、ある日メールで詩が送られてきたので見てみると…。

 おれたちゃ じょうもん じょうもん うほっほほ うほっほほ
 汗をながして 耕す 耕す うほっほほ うほっほほ
 背中にギラギラ たいよう たいよう
 つくばさんに夕日が落ちる ほんとの祭の始まりだ
 いのちの祭の始まりだ

な、な、なんじゃこりゃ~。予想していた詩とはだいぶイメージが違っていたのでビックリ。でもひるんでいるわけにはいかない、曲をつけねば…。
そしてけっこう頑張って途中まで作ったのですが、どうしても詩の長さと小節の数がうまく合わず期日までにまとめることができませんでした。そして残念ながらお蔵入り(結局、Yさんがこの詩に自ら曲をつけ完成させました)。
でもなんかもったいない。ボクが作ったものもせっかく途中までできていたのに。詩を書きかえれば曲になるのでは?
そして詩を大幅に書き換え、新しい曲を作ることにしました。
そしてでき上がったのが、この『オレたちゃ百姓』です。
百姓として自然と共に生きることの喜びや誇りを表現したつもりです。

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オレたちゃ百姓

作詞 武藤俊郎  作曲 武藤俊郎

オレたちゃ百姓 
クワを振り ウネを立て 種をまく
照りつける太陽
汗をふき シャベル振り、堆肥をまく
大地を風が吹き抜ける
果てしなく広がる青い空
草のにおい
鳥のさえずり
森が揺れてざわめく woo…

オレたちゃ百姓
鎌を振り 草を刈り 苗を植える
今年も豊作
イモを掘り 葉をつみ、実をもぎる
恵みの雨が大地をたたく
まぶしく輝く新緑の里山
土のにおい
芽吹くいのち
田んぼの蛙が騒ぎ出す woo…

オレたちゃ百姓
オレたちゃ百姓
オレたちゃ百姓
オレたちゃ百姓
ずっと百姓
ずっと百姓
ずっと百姓
ずっと百姓




# by muto-farm | 2018-02-11 22:56

新規就農の歌

「サラリーマンを辞めて農業をやる」と聞いたら一般の人はどう思うのでしょうか?
「夢があっていいじゃないか」と言ってくれる人もいますが、「バカな事は考えるな。農業で食っていけるわけないだろ」と言う人も相当数いるでしょう。
ボク自身、農業で本当に食っていけるのかかなり不安で、なかなか決断ができませんでした。
当時はまだインターネットで豊富な情報を集められる時代ではありませんでしたので、雑誌などで新規就農した人の記事を時折見かけることはあっても、細かい経営スタイルや生活などを詳しく知ることはできませんでした。成功した人が少なからずいる事はわかりましたが、どうすれば成功できるのか。その辺の具体的なイメージがなかなかつかめませんでした。自分が越えなければならないハードルの高さや形がよくわからないわけですから、いっそう不安が募りました。でも一方で、どうしても農業をやりたい、挑戦してみたい、という気持ちも強く持っており、夢と不安に挟まれ悩み続ける時期がずっと続きました。
明日こそ辞める話を上司にしよう。そう思っていても朝になると急に不安に襲われ、やっぱりもう少し考えてからにするか、となってしまったことも幾度となくありました。ある程度責任のある仕事を任されていると、当然アルバイトを辞めるようには簡単にはいかず、一度辞めるチャンスを逃してしまうと次に仕事の区切りがつくまでは辞められなくなってしまいます。
一度しかない人生、好きな事を職業にして思いっきり打ち込もう。いや、それは無謀なことかもしれない。せっかく安定した収入を得られる職についているのにそれを棒に振るのか。それでもやっぱり自分らしさを取り戻し生き生きと暮らしたい。でも現実はそんなに甘くないはずだ。そんな自問自答を延々と繰り返しました。挑戦して後悔するか、挑戦せずに後悔するか…。少なくとも挑戦しなかったらあとで絶対後悔するのは明らかだ。あの時やっていれば、と必ず思うだろう。今までのボクの人生、あの時ああすれば、というようなことばかり。もうこれ以上は後悔を増やしたくない…。
そして6年悩んだ末、ようやく会社を辞めることになりました。辞める事が決まった途端、何だか自分でもびっくりするほどスッキリした気持ちになりました。
ちょうどその頃埼玉県小川町の友人M永さん達の、ダイズ畑を耕作しているグループに参加していました。会社を辞める事を報告すると、いよいよだね、おめでとう、生き生きとした顔になったね、頑張ってね、とみんなから激励の言葉をいただきました。その後M永さん宅で炬燵に入り雑談をしながらダイズの選別作業をしていたのですが、ふと押し入れを開けると中から一枚の詩が書かれた紙が出てきました。それはまさにその時の自分の気持ちにピッタリの詩でした。以前脱サラをして農業の専門学校に行っていたM永さんが、卒業間近に同僚のTさんから渡された詩だそうです。M永さんはバンドをやっていたので曲をつけてくれという事だったようなのですが、彼はすっかり忘れて押し入れにしまったままになっていたそうです。さっそくこの詩をコピーして持ち帰り、曲を作らさせていただくことにしました。そして半年かけて曲を作り上げました。ちなみに詩にはタイトルがなく、『新規就農の歌』というダサいタイトルはボクがつけたものです。

就農してから幾度となく変な夢を見ました。今でもまだ時々見ます。それは仕事に苦戦しながら「ああ、あの時なんで会社辞めなかったんだろう。農業すべきだったな」と後悔している夢です。そして目が覚め「ああ、オレ農家になったんだったよな。好きな農業毎日思いっきりやっていいんだよな。よかった~」と…。この夢を見るたびに農業をやれる喜びを思い出し初心に帰る事ができます。もしあのままサラリーマンを続けていたら…。きっとあの夢の中の自分のようになっていたんだろうと思います。

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新規就農の歌

作詞 玉木洋次  作曲 武藤俊郎

新しい時 新しい場所
すべてが 動き始める
土… 水… 風… 草木が 虫達が
この地球(ほし)の上で
夜明けから 日暮れ迄
生命(いのち)の中で 生命を燃やす
生命を奪い そして 生命を創造(つく)る
やってみなきゃ わからない
間違ってもいい しくじってもいい
やってみても まだ わからない
嘲笑われてもいい けなされてもいい
やれるかどうか なんかじゃなくて
やりたいから ただ やるだけ
keep on create Life together
いま 道を開拓く(ひらく)

やってみなきゃ わからない
間違ってもいい しくじってもいい
やってみても まだわからない
嘲笑われてもいい けなされてもいい
創造る為に 生きるんじゃなくて
生きる為に 創造る
keep on share Life with each other
いま 生命を創造る

永遠を 創造り続ける
永遠に………




# by muto-farm | 2018-01-11 11:02

君のいない畑

農家のせがれでなくても農業はできる! これからはやりたい人が農業をやる時代に必ずなる! いや、もう既になっている!
ある農業セミナーに参加してこの事を知った時は、本当に衝撃的でした。
これはもうやるしかない! そう思いその日から本気で就農を考えるようになるのでした。
でも、農業と一口に言っても酪農、養鶏、稲作、花卉、野菜、果樹と色々あります。何をどこの場所でやるのか。これを決めなくては先に進めません。
新規就農についての本を片っ端から読み考えましたが、何をやればいいかどうしても決まりませんでした。
ある農業改良普及員の方から「あなたが一番大切に考えているものは何か。それを突き詰めて考えて行けば自ずと答は出るはずだ」とアドバイスをいただきましたが、それでも答は出ませんでした。

要するに自分は農業の事が何もわっかっちゃいないのです。もっと農業の実際を知らなくては。そう思い、週末に水戸の農業の専門学校で開催されている講座に参加することにしました。
偶然その講座に、山で何度か会ったことのある女性Kさんが妹さんと参加していました。
彼女たちはさらに学校内に畑を借り、たくさん野菜を作ろうと意気込んでいました。
「週末しか来れないから畑がちょっと広すぎるかも。武藤さん一部分やらない?」
「うん、面白そうだね、やるやる!」
「私たちは有機栽培でやるから武藤さん間違っても化学肥料なんか入れないでね」
「う、うん、わかった」
ちょうどその講座は「有機野菜づくり」のコースでしたので、講座で習ったことを畑で実践しようということになりました。
「これからは有機農業の時代よ」
Kさんは力強く言うのでした。
「ふ~ん、そうなんだ」
ボクは本当に無農薬で野菜がちゃんとできるのか、まだ半信半疑でした。
これがボクにとって有機農業との最初の出会いでした。
そしてボクはメキャベツを、種から気合いを入れて栽培してみました。
収獲できたメキャベツは小さくてみすぼらしいものでしたが、食べてみるとおいしいのなんの。世の中にこんなにおいしいものがあったんだ、と思うほどでした。
それからスーパーでもっと立派なメキャベツを買って食べてみたのですが、こちらはあまり味がしませんでした。
こんなに違うんだ。そうか有機農業か。どうせやるならおいしくて安全で胸を張って自信を持って売ることができるものを栽培したい。そう思い、翌年から有機農業のメッカである埼玉県小川町に月2回通い始め、ますます有機農業の世界に魅せられていくことになるのでした。

水戸の学校の畑は、翌年から自分で一区画借り結局6年間やりました。将来有機農家になる事を想定し、畑でさまざまな栽培の仕方を試したり、自家製のボカシ肥料を作ってみたり、色々な実験もしてみました。
畑を始めた頃は、Kさん姉妹やその友達やとなりの畑をやっている人達も巻き込んで、みんなでわいわい楽しくやっていたのですが、年数が経つにつれだんだん畑に来る人が少なくなっていきました。
東京から車で2時間半かけてやっと畑に着いても、誰もいないなんてことも珍しくなくなりました。
昔はあんなに賑やかだったのにな…。
それでもボクは寂しくひとりで黙々と農作業を続けました。
有機農家になる事を夢見ながら…。
そしてそんな時に自然にできたのがこの曲です。

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君のいない畑

作詞 武藤俊郎  作曲 武藤俊郎

今日は朝から雨がしとしと降っている
こんな日に畑仕事をするような
物好きはきっとオレくらいなもんさ
あたりに人影はなし
君のいない畑で僕はひとり
ただ草を刈っている
いつか本当の百姓になれたらいいな
そんなことを夢見ながら

今日は太陽がカンカン照りつけている
こんな日に畑仕事をするような
物好きはきっとオレくらいなもんさ
あたりに人影はなし
君のいない畑で僕はひとり
人参の種をまいている
いつか本当の百姓になれたらいいな
そんなことを夢見ながら

時は流れ季節は変り
君は畑を去って行った
昨日畑には初霜が降りたよ
大根が収穫を待ってるよ




# by muto-farm | 2017-12-11 22:42